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東京地方裁判所 平成7年(特わ)884号 判決

裁判所書記官

釜萢範人

本店所在地

東京都千代田区神田須田町一丁目一〇番八号

株式会社日産広告社

(右代表者代表取締役 吉村毅)

本籍

東京都渋谷区恵比寿西二丁目一三番

住居

東京都小金井市貫井南町一丁目二一番一三号

レジデンス純二〇一号

会社役員

吉村毅

昭和二〇年一一月二九日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官長島裕、弁護人関野昭治各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社日産広告社を罰金一三〇〇万円に、

被告人吉村毅を懲役八月に処する。

被告人吉村毅に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社日産広告社(以下「被告会社」という)は、東京都千代田区神田須田町一丁目一〇番八号に本店を置き、求人広告の募集業務等を目的とする資本金二〇〇〇万円の株式会社であり、被告人吉村毅(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成元年六月二日から平成二年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億五四九三万三〇四四円(別紙1の1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、法人税の確定申告期限の経過後である平成二年一二月七日、東京都千代田区神田錦町三丁目三番地所在の所轄神田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八九九六万一四〇八円でこれに対する法人税額が三五一〇万三九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成七年押第一二九二号の1)を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額六一〇九万二七〇〇円と右申告税額との差額二五九八万八八〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成二年五月一日から平成三年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億〇六九五万九三三一円(別紙1の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年七月一日、前記神田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億五五九一万五五二六円で、これに対する法人税額が五七二七万三六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額七六四一万五一〇〇円と右申告税額との差額一九一四万一五〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成三年五月一日から平成四年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八九八六万三四二七円(別紙1の3の修正損益計算書参照)があったにもかかわらず、平成四年六月三〇日、前記神田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五〇一四万四〇五六円で、これに対する法人税額が一七五四万八〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三二四四万二六〇〇円と右申告税額との差額一四八九万四六〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書一〇通

一  山崎敏男及び赤津日出子(平成六年八月二三日付)の大蔵事務官に対する各質問てん末調書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、給料手当調査書、賞与調査書、受取利息調査書、損金の額に算入した道府県県民税利子割調査書及び領置てん末書

一  検察事務官作成の捜査報告書三通

一  登記官作成の登記簿及び登記簿閉鎖役員欄用紙(二通)の各謄本

判示第二及び第三の事実について

一  大蔵事務官作成の事業税認定損調査書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の製作費調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成七年押第一二九二号の1)

判示第二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の計算誤謬調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)

(法令の適用)

※ 以下の「刑法」は、平成七年法律第九一号による改正前のものである。

被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項(第一の事実の罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、刑法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役八月に処し、情状により刑法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとし、さらに、被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑(第一の事実の寡額の関係は前同)に処せらるべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、刑法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金一三〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、求人広告の募集等を業とする被告会社の社長である被告人が、三事業年度にわたり、合計六〇〇二万円余の法人税を脱税したという事案であるが、ほ脱率は通算約三五・三パーセントとやや低い部類に属する。このような脱税額、ほ脱率のほか、犯行の動機、態様、被告人の反省状況、被告会社の納税状況(附帯税を含め完納済み)等をも総合考慮して、主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金二〇〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1の1

修正損益計算書

〈省略〉

別紙1の2

修正損益計算書

〈省略〉

別紙1の3

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2

ほ脱税額計算書

自 平成元年6月2日

至 平成2年4月30日

株式会社 日産広告社

〈省略〉

自 平成2年5月1日

至 平成3年4月30日

株式会社 日産広告社

〈省略〉

自 平成3年5月1日

至 平成4年4月30日

株式会社 日産広告社

〈省略〉

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